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「日本人の勝算」を読んで

著者デービッド・アトキンス氏は、イギリス生まれオックスフォード大学で日本学を専攻し、日本在住30年の日本通。現在、小西美術工藝社の社長を務めている。

本書は、日本人が無意識のうちに抱いている潜在的な思い込みに、気付かせてくれる。また、世界中から集めた豊富な裏付け資料を用いて、現在の日本に効く処方箋を提示している。

 

人口減少社会と高齢化が世界最速で進行している日本は、パラダイムシフトが進むのでこれまでと異なる対処が必要になる。例えば、(大量生産して)「良いものをより安く提供する」から(多品種少量生産して)「価値あるものをそれなりの価格で提供する」時代に入っているということか。

 

生産性が高い企業は、輸出を行い、ある程度の企業規模(500人程度)を持っているというデータが示されている。氏は日本は中小企業を大事にしているが、人口減少時代には企業の減少もやむを得ないと指摘している。中小企業支援も優良な中小企業を選別した上で、支援すべきで、結果的にM&Aなどで企業規模拡大につながるということか。

 

生産性を高めるといえば、単に「これまで1時間で作っていた製品をより短い時間で作ること」と思いがちであるが、氏は最低賃金の引き上げが大事であると説く。

基本に戻ると労働生産性は、従業員一人当たりの付加価値額と定義されている。

【付加価値額=経常利益+労務費+人件費+・・・・・】

人件費を極力抑え、企業の利益を確保するだけでは、労働生産性は画期的に高まらない。まず、最低賃金を引き上げ、かつ企業利益も高めるべきということだろう。

日本の最低賃金が都道府県別に定められているが、これはアメリカの真似をしているのだろうとのこと。(イギリスは全国統一の最低賃金が定められている。)日本は都道府県別となっているため、東京一極集中をかえって助長していると説く。

 

氏は大人の学びが、生産性向上に有効であると説く。特に、経営者の教育が強調されている。いわゆるパラダイムシフトを意識し、これまでの延長線上で経営を考えるなと説いている。