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カミユの「ペスト」

 物語は1940年代のアルジェリアの港町オランが舞台。ネズミが街のあちこちで死に、その数が日ごとに増え、ついには何千匹のネズミの死体が毎日発見されるようになる。ネズミの騒ぎが収まり、次の段階では人間が正体不明の病に倒れ、ネズミの時と同様に日ごとに被害者が増えだす。

 

 感染被害が広がらぬよう、オラン市の当局は街を完全に封鎖してしまう。医師リウー、新聞記者ランベールらは、この封鎖により妻や恋人と生き別れとなる。街中の行き場のない閉塞感は、我々がいま体感しているもの、そのものである。・・・

 何か月かして、ペストはある日突然潮が引くように終息する。

 

 今回のコロナウィルス問題は、近年のグローバリズムの中で起きた。まるで、世界が一つの村になったようなものである。テレビやインタネットにより、我々は幸か不幸か毎日主要国の首脳や自治体の長の対応を飽きるほど見せつけられ、その影響をもろに受けている。その任にあるトップの方々は、その使命を自覚し、しっかりその役目を果たしていただきたい。われわれ国民も極端な考えや風評に流されることなく、早期に軟着陸するよう慎重に行動したいものである。

 

 特効薬やワクチンが開発され、世界中に効果を発揮するまでには、それなりの期間が必要になるだろう。従って、今のような日常生活の様々な制約が急に取り払われることはないと想像する。飽くまでも自分の感覚であるが、元に近い生活を取り戻すのに約1年、安心してオリンピックが開けるまでには、さらにプラス1年を要するだろう。悲観的すぎるかもしれないが、ある程度の予想を立てれば、毎日をより落ち着いた気持ちで暮らせるようになるかもしれない。

 

 今回のコロナウィルスで、日本国内に限ってもいろいろな問題が浮き彫りにされている。

  ・パンデミック対応の司令塔や体制がはっきりしないこと。

  4月末になっても、PCR検査体制が確立せず満足に機能していないこと。

  ・初動の遅れは、医療崩壊に直結してしまうこと。

 ・経営悪化に伴う企業支援や、収入が減った人々への公的支援が遅く不十分であること。

 ・義務教育をはじめとして、教育分野のオンライン化が遅れていること。

  ・企業規模が小さいほど、IT化が進まず、在宅勤務の割合も少ないこと。などなど

 単純に元の生活に戻るのではなく、この機会にこれらの諸問題を整理し、より進化した社会を目指すべきである。ニューヨーク州のクオモ知事は、’Build it back better’(BBB)「以前よりましに再建する」ことを提唱し始めた。